妄想ガールの王子様
心臓がが今までにないくらいに大きくはねる。

「俺は梨乃の王子様になれた?」

「お、王子様って……?」

「梨乃が財布に入れてるカードって『乙恋』のアンディ王子……だろ?」

春田くんは少し意地悪に笑った。

「どうしてそれを……」

「日野から聞いた。梨乃はアンディ王子みたいなのが好きなんだって」

日野くん……。

その名前にわたしの胸がちくんと痛む。

……きっと三人で集まることはもう無いだろう。

だってわたしは日野くんを……。

「……梨乃には俺がいるから」

「うん……」

春田くんの鼓動と声に包まれてわたしは目を閉じた。

とその時。

堤防の方からよく知った声が聞こえてきた。

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