妄想ガールの王子様
二人で堤防に腰かけて海を眺める。

幸い春田くんはカードの事はそれ以上聞いてこなかった。

ホッと胸をなでおろして炭酸ジュースを飲み干す。

「あの……春田くん」

「うん?」

「その写真現像できたら見せて欲しいんだけど……」

わたしは思い切って言った。

春田くんの撮った写真が見たい。

彼の目に映る世界を知りたい。

少しでも近づきたい……そんな気持ちが胸に広がる。

「え?俺の写真が見たいの?」

春田くんは少し驚いてわたしを見て。

「そう言ってもらえると嬉しい。じゃあ現像が終わったら連絡する」

こうしてわたしは春田と連絡先を交換してその日は別れた。

帰り道わたしは妙にふわふわとした気持ちになっていた。

なんだか楽しいことが起こりそうな。

そんな予感めいたものを感じていた。




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