彼の者、魔王と云ったそうな



さわさわと揺れる木々に、せらせらと流れる河流。

とある森の中を、長上下(ながかみしも)に似た着物を身につけた老人がひとり、歩いていた。

しかして彼を只の老人(人間)と侮るなかれ。正体は偉大なる者である。


魔王・山ン本 五郎左衛門


そう、どこかで聞いたことはないだろうか。

東の頭領(ドン)と云える彼には、つき従えている妖怪も数多く。

それ故、こうして一人山の中といえど襲われたとしても心配無用。


人間は殺められ、妖怪は平伏すまでだ。


そんな彼が、一体こんな山の中へ何の用があると云うのか。

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