彼の者、魔王と云ったそうな
どかっと縁(えん)の隣に座る道吉は、さわさわと揺れる木々に目を向けた。
「アイツがいなくなってから、もう8年。生意気面も少しはマシになっていればいいけどな」
「そういう道ちゃんは嫌われとったもんねえ」
「……あの事は、悪かったと思っている」
「あら、偉く素直やないの」
クスクス笑う縁に、道吉はチッと舌打ちをしてそっぽを向いた。
「別に、素直になったワケじゃない。大人になっただけだ」
「せやな、みーんな大人になってくんや。僕より小さかった道ちゃんも、あの子も、すっかり僕ンとこから離れてもうて……」
「お前はもともと妖だったからね。ま、俺より精神年齢は低いことに変わりはないけどな」
「その割りに随分と僕を頼ってきてはるんやね、かわええ子」
「なっ……ば、馬鹿言え!この俺になんたる侮辱っ………!」
はっと目を見開かせ、辺りを窺う道吉。その表情は強(こわ)ばっている。