彼の者、魔王と云ったそうな
同じように縁も目を遠くに向けた。
何かの気配。人ではない、だけれど人の臭いも微かに薫るこの感じ。
「妖か……」
「道ちゃん、どっか庵の奥んとこに隠れとってえな」
「相分かった」
すぐさま腰を上げ庵の奥へと足を速める道吉の背を確認し、縁は庵から離れ、この敷地の入り口へと移動した。
誰かいると分かっていながらも、気配が彼方此方(あちらこちら)からするため、うまく読みとれない。
一体どこに…………
「ああ、人ではなく妖だったか。して、お前の名はなんと云う」
「?!」
いつの間に。
縁の後ろにはひとりの老人が立っていた。長上下に似た着物に、ただならぬ雰囲気。