push
 

 試験に受かってからもう2週間がたった頃だった。
 買い物から帰ってきた母さんが、買ってきたものをしまう気配もなく私の部屋にきた。


「今日久しぶりに、恋くんにあったわよ」


 帰ってきて第一声がそれですか。
 呆れつつも羨ましい私は素っ気ない返事しか出来ない。


「へぇ…」


 へぇってなんだ。めちゃくちゃ興味あるクセに。
 元気そうだったか、とか。とか、っていうけどたいして言葉が浮かばない。

 母さんも私の返事にどこか納得いかない様子で、


「あんまり興味なさそうね」


 なんて、頬に手を添えてため息混じりに呟く。

 興味津々だよ。むしろがっつりだよ。
 母さんが引いちゃうくらいだよ。
 けど、そんなことは言えないからちらっと睨むようにしてみて黙っておく。


「あー。せっかくなのに」
「何が」


 言葉には少し棘を含みながら、母さんのその溜めに釣られてしまう。
 何、なんなの。

 
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