push
「どーしようかなー」
母さんの焦らし作戦に、まんまと嵌まる小娘だよ。
てか勿体振るな。これでたいしたことじゃなきゃ、今週末は食事当番やらないぜ。
それくらいの勢いだ。
「…何?」
「何、気になっちゃう感じ?」
ムフフ、とニヤニヤしながらそばに掛けた母さんの憎らしいこと憎らしいこと。
「もうちょっと素直になったら教えてあげてもいいわよ」
自分の娘を楽しみながら虐めるとは、なんと酷い。
「な、私素直だもん。これ以上ないって程素直だもん」
「はいはい、あんたの素直は本当に見えにくいわね」
苦笑いしながらも、はい、と母さんが手にしていた白いものを私の目の前に差し出した。
まじまじとみやるけど、どうみたって手紙だった。
「え、これ……?」
「預かってきたの。恋くんから」
そのことだけで、驚きで目を丸くしたまま渡された手紙を見つめてしまった。