push
 

 1人での夕食は、これで6回目。
 一昨日作って冷凍しておいたコロッケを温めてレタスとコーンだけのサラダと一緒に食べる。
 食欲もあまりわかず、どちらも半分くらい残してラップをかけた。
 暫くぼーっとテレビに目をやりニュースの断片を頭に入れる。
 ふと時計をみると10時を回っていた。
 そろそろお風呂にでも入って身体を温めて寝よう、今日はもう寝てしまおう。

 そう思って立ち上がろうとテーブルに手をつき力を入れた瞬間、電話が鳴った。
 普段なかなか鳴らない為に、詐欺や勧誘かもしれないと思いつつも電話の前に立ち、留守電にメッセージが残るかを聞こうと思った。
 発信音の後に……、と電子的な音声が告げ、ピーという発信音が鳴る。

 少しの沈黙。
 思わず息を飲んだ。


“サネユキです。ハツカ、いますか?”


 少し心配そうに声を投げる彼の姿が、見える気がした。
 6日振りの声が、嬉しくて嬉しくて受話器を急いで耳に当てた。


「も、もしもし…」
「ハツカ、今帰ってきたの? お疲れ様」
「ううん、今日は定時。けど今さっきご飯食べたトコ」


 少し嘘だったけれど、いいか、と思った。
 けど、彼から電話なんて珍しい。


「そ、それよりどうしたの? 電話を掛けて来るなんて珍しい」
「ああ、」


 少し照れたように声が篭る。


「声、聞きたいと思って」


 今回も泣きじゃくりながらの電話が来るものだと思っていたのに、全くなかったから不安だったと、彼は恥ずかしそうに言った。
 へらり、と笑った気がしてそんな彼が愛おしかった。


 いつも自分から掛けてばかりで分からなかったけれど、彼も私のことを思ってくれていたんだなあと胸がいっぱいになった。






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(当たり前でしょっ……!)

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