スキというキモチのカタチ。
それぞれのカタチ。

このはのキモチ。

「馬鹿か、お前。」




朝の挨拶代わりにしては辛辣な御言葉。



「お…おはよ、彬ちゃん。
いやもう、アレよ。メイクがさ、イマイチ決まんなく」
「ねぇだろ、お前の場合。
玄関で指を挟むとか何回目だ?少しは学習しろって。

てかさ、35にもなる男にちゃん付けはやめろって何回目だ?あぁ⁈」




あ〜今日もまた叱られちゃった、てへぺろ。


なんて心の中で思ってたら顔に出てたらしい。


睨まれた…。




「じゃあ、彬。」



「年上を敬え。

社会人になっても口の利き方わかんねぇのか?」




スタスタと先を歩くスーツ姿の彼。


口は悪いけど、いつもアタシの事を考え伝えてくれる。

そんな彼の優しさに気付かないほどアタシは子供じゃない。




毎朝待ち合わせている訳じゃないのに玄関先で必ず会う。


他愛の無い会話を必ず彼からしてくれる。



悩んでるときはアドバイスだってくれる。


一回りも年が違うから、彼、川藤 彬(かわとう あきら)からしてみたらアタシなんて妹みたいなものだってわかってる。
妹みたいだから色々心配してくれてるんだ、って優しさの意味だって、それもちゃんと理解してる。




それでも。





自分のキモチに気付いてから10年間。



ずっとずっとスキだって伝えてきた。






いつも答えは同じ。







「このはは幼馴染だから。」






何が足りないのかな。



アタシに足りないモノって何だろ。


色気…皆無だし。
スタイル?………平均だし(胸は小さいけどさ…)




年は仕方ないじゃん。


彬ちゃんが12年も先に生まれちゃったんだもん。



アタシだって好きで12年も後に生まれたわけじゃないよ。





小さい時から側に居て、当たり前の様に守ってくれてたから。





アタシにとって彬ちゃんはトクベツだった。




お兄ちゃんみたいで、お父さんみたいで、先生みたいで。







スキ。








毎朝こうやって先を行く彼の背中にキモチを届けてる。





「このは!
行くぞ、早くしろよ‼
お前みたいなチビ、電車ン中で揉みくちゃになるだろ!」





スキだよ、彬ちゃん。




「今日も鉄壁のガード、よろしくねっ!」


スキ好き言っても
嫌われないだけマシなのかな。





こんな他愛の無い毎日がアタシには幸せ。






< 1 / 37 >

この作品をシェア

pagetop