スキというキモチのカタチ。
一週間が始まると、割と暇な平社員のこのはと違い、彬は毎日遅くまで忙しそうだった。


隣に住んでいても朝以外は顔を合わせない毎日が続く。



週末を待ちわびて毎日を過ごす。



そんな木曜日。


美来とランチを食べにcat walkに来ていた。


視線が痛い。

あれから来る度にマスターからの強い視線が痛い。

(ごめんなさい!)

毎回心の中で平謝りするしかなかった。



「結婚とかいつしようとか話し合いしてるの?」



…空気読まないオンナNO1だわ。

この状況でアタシの話をしないでー!

……って心で叫んで、引きつった笑みを浮かべる。


「アタシの事よか美来の方はどうなのよ?課長と結婚しないの?」

美来は綺麗な顔を歪めて言い切る。

「知らないわよ、あんな人!」



あらららら。

喧嘩かしら。

「どうしたの?課長と喧嘩した?」


問いかけると美来は急に下を向く。


「面倒くさいって言われちゃった…。」


ポロリと涙がこぼれ落ちる。

「美来…。課長とちゃんと話をしたの?
またカッとして"もういい‼"とか言っちゃったんじゃない?」


図星らしかった。


みるみる間に大粒の涙をこぼしはじめ
る美来を見ていてなんとかしてやりたかった。

自分の時に沢山話を聞いてくれて、励ましてくれた美来だから、力になってやりたい。



けれど、課長とはほぼ面識がないのだ。


「美来ちゃんはさ、もう少し素直にならなきゃだね。」


何か言わなきゃ。


そう思って言葉にする。

すると。


「あたし、このはみたいにじっと待ってるなんて出来ないの。
いつも自分のこと見ててくれなきゃ嫌なの。
このはが羨ましい。」



恋する女は色んなモノを羨んだり嫉妬したり忙しいのだ。


「待つのは嫌いじゃないけど、アタシだって彬ちゃんがちゃんとアタシを見ててくんなきゃ嫌だって思うよ?
それを言葉にするとしないとじゃ違う結果になると思う。」



その言葉に美来は顔をあげる。



「今日…もう一回話してみる。」


「うん、頑張れ。」


誰もが羨む美人の美来にも、恋は上手くいかないものなんだ。


美来をいつも羨ましく思って見ていたこのはは、悩み涙する美来を以前よりもっと身近に感じたのだった。





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