スキというキモチのカタチ。

コイビト・彬。

初めてこのはを抱いてから、1ヶ月が過ぎた。


側に居た少女が女に変化した。


まるでサナギが蝶になるように。


(しかしだ!なんでこんなに忙しくなるんだよ‼)

あれ以来、なかなかこのはを抱けない。


それだけが目的ではないから何とか心を抑えてきた。


が。



1ヶ月を過ぎると流石に我慢の限界だ。



毎朝このはの手を取り、駅までの道を歩くだけしか出来ない。

週末に接待だの出張だの、まるで誰かがワザと邪魔をしているようにしか思えない状況が続いていたのだ。




せめて。



せめて来週のこのはの誕生日くらいはべったりと一緒に過ごしたい。




そのために今は我慢なのだ。




「誕生日に何が欲しいか考えとけよ。」



そう伝えたら思わぬ言葉が返ってきた。

『彬ちゃんが欲しい』


腹の奥の辺りでドクンと脈打つ。



自分だけじゃないんだ。このはも俺を欲しいと思ってくれていた。



それが堪らなく嬉しかった。



例えそれが一緒に居るだけ、とか単純な意味合いだったとしても。


幸せで堪らなかった。




「課長、書類チェックお願いします。」



差し出された書類を見て我に返る。


「あぁ、分かった。」

妄想してる場合じゃなかった。
ニヤケてなかっただろうか。


右手で口元を覆うと深呼吸する。



「お疲れですか?」



女性社員に声をかけられたが、いや、と短く答えるだけに留める。



余計な詮索はされたくない。


彼女との情事を妄想していたなんて、口が裂けても言えない。




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