スキというキモチのカタチ。

最愛のヒト・このは。

金曜日。



仕事を終え、メイクを少し直す。
今日の為に新しく買った下着に洋服。


(別に今更勝負するわけじゃないんだけどさ…。)

言い訳めいた感情を押し込む。




会社のロビーで美来と課長を待つ。

エレベーターが開き、美男美女が颯爽とやってくるのを見て惚れ惚れする。


(お似合いのふたり。いいなぁ…釣り合ってて。)


「このは!お待たせ〜。」

ニコニコ顔の美来。
本当に好きなんだね、課長のこと。
いつもの美来とは違う、オンナとしての美来を見るのは初めてかもしれない。


「お疲れ様、木内くん。
ごめんね、急に時間作って貰うことになってしまって。
瀬戸です。よろしく。」

ゆっくりと差し出された課長の手に、戸惑いながらも自分の手を重ね挨拶を済ませる。


「いえ、こちらも勝手に私の彼を呼んだりして申し訳ありません。

宜しくお願いします。」


和かな課長の表情。

後ろに立つ柔らかな表情の美来。


2人の間にはこのはと彬との間にあるものとはまた何か違う、絆みたいなものが見えた。



「このはの彼は?待ち合わせ、駅?」


挨拶を済ませた3人はロビーのベンチに座って話しをしていた。


「ううん、ここまで来るって。」


「よく知らないんだけど、木内くんの彼は年上なんだって?」


突然瀬戸から話しを振られて、あたふたする。


「あ、はい、一回り上です。今35歳なんで…営業の仕事してます。」


「へえ!オレ達もかなり年の差あるけど、更にだねぇ!

君の事は美来からよく聞いてるんだ。」


「ろくな話しじゃないですよね、多分…」


俯くこのはに美来がバシン!と背中を叩く。

「やだもう、へんな話はしてないわよ!」



…信用ないな、美来のこの態度。



そうこうしているうちに、彬の姿が見えた。


「このは!」



コートを羽織ったスーツ姿の彬は、周りに居る女性を振り返らせるほど魅力的だ。


少し息を切らせて小走りでやってくる。




「すまん、遅くなった。」

「ううん、ごめんね。忙しくて疲れてるのにわざわざこっちまで来て貰ったりして。」


今朝、今日の予定などを予め話しておいたが忙しい彬に合わせて予定時間を遅めに設定していた。


「初めまして、川藤 彬です。」


さり気なく名刺を差し出す彬。

(仕事モードの彬ちゃんってこんな感じなんだ…)


それに返す様に瀬戸も名刺を差し出す。


「瀬戸 晋哉です、高杉 美来の彼氏です。
が、ここの営業で課長を務めています。」


「へえ!偶然だな、俺も営業の課長してますよ。」


堅苦しかったのは最初の名刺交換だけ。

その後はいつもの彬に戻っていた。


「じゃあ行きますか。」


瀬戸に促されて4人で会社を出る。

「美来ちゃん、お店は?」



このははなにも聞かされてなかったので問いかける。




「もちろんcat walkだよ!」




………。




だから空気読め!


って言いたかった。

なんでまたなの…?


マスターと気不味いままのこのはは、店に行くのが躊躇われた。


「気にしない気にしない!」


そりゃそうなんだけど。

だけど。



隣を歩く彬を見やるとフワリと微笑んだ。



「俺も気にしてないよ。」




まさか、男同士でバトルが勃発してるなんて誰も知らないのだから。

「このは、大丈夫だよ。」


暖かい彬の手に包まれて、何故か安心した。




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