スキというキモチのカタチ。

最愛のヒト・このは。再び。

逃げるようにパウダールームに入る。



「このはっ」



追いかけてきたのは美来だ。

「大丈夫だよ、彼は分かってくれてるよ?」


「でもっ、アタシがゆってるのはただの我儘だもん!」


分かっているのだ。
過去に捕われても仕方ないと言うことも、仕事が忙しくて会えなかっただけなんだと言うことも。



寂しくて、ただ我儘を言っているだけだ。

「美来ちゃん達が羨ましい…。会社一緒だと会う事出来るし。」


「このははお隣さんじゃない。
会いたいときに会えるでしょ?疲れてるんじゃないかとか、迷惑かけるんじゃないかとか、川藤さんを気遣うから寂しくても我慢して会わずに居たんじゃないの?」



その通りだ。


いつでも会える距離にいても、彬の事を考えたら頻繁に会うのは邪魔になってしまうんじゃないかと思っていた。



「このはも素直になりなよ。好きなんでしょ?」
「うん、スキ…でも自分に自信が無い…。」



どうしようもない感情だってあるのだ。



「大丈夫。愛されていくうちに、自信持てるようになるよ。
恥ずかしがらずに、ぶつかっていきなよ。川藤さんなら、このはのこと受け止めてくれるよ。絶対に。」



そうだろうか。


確かに恋人になる前までは言いたい事を言い合ってたような気もするが…。


「うん、頑張る…。」



心に決める。

この後、ふたりきりになるだろうから。
伝えたい事、ちゃんと言えるように。


「あたしもね、晋也さんと色々あってね。この前、別れようって言われたの。」



ポツリとつぶやく美来を見る。

「え…なんで⁉」


初耳だった。

そんな風に悩んでいるようには見えなかった。


「晋也さんが何考えてるかわかんなくなって…何かあるとすぐセックス。
身体でいうこときかせようとするの。
それが嫌でさ…。」


俯いた美来も泣き顔だ。


「このはが言ったじゃん。言わないと、って。だから、イヤって言ったの。身体にモノ言わすみたいなやり方、イヤって。」


あの感謝の言葉の裏にはこんな感情のやりとりがあったのか…。


顔を上げた美来は綺麗な顔をして笑っていた。


「そしたらちゃんと話し合う事ができたの。だから、このはもね、頑張ろうよ。」


2人でニッコリ笑い合う。


「頑張る!」


笑顔で答えた。

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