スキというキモチのカタチ。

最愛のヒト・彬。再び。

店を出て、彬とこのは、瀬戸と美来、お互いに手を繋ぎあってそれぞれの道へと進む。


「完璧だと思ってた美来ちゃんも、アタシと同じで悩んだり迷ったりしてるんだ、って解ったら、少しだけ不安じゃなくなったよ。」


ゆっくり歩きながら、このはがポツリとつぶやく。


繋いだ手からぬくもりがゆっくりと伝わってきてホッとする。


「完璧な人間なんていやしないさ。
俺だって不安だらけだよ。」

パッと顔を上げたこのはが不思議そうにこちらを見ている。


「彬ちゃんも?」


「当たり前だろ。お前より年上だからいつも落ち着いてるみたいに言われるけどな、俺だってお前といて理性が吹っ飛びそうになる時だってあるんだよ。」


このはは足を止め、ビックリしたような顔でこちらを見ている。


「理性が吹っ飛ぶ…?」


意味がわからない、とばかりに小首をかしげている。
なんだか可笑しくなってきた。


「なんだよ、その顔!」


ほっぺたを軽く摘むとこのはが声を上げた。


「痛い!

だって不思議なんだもん!
彬ちゃんの理性が吹っ飛ぶとこなんて想像つかないし!」


なんとか大人の威厳を保つために必死だからな、俺も。


「吹っ飛んでもいいのかよ。」


「え?」


立ち止まったこのはを強く引き寄せ、腕の中に閉じ込める。


「お前が嫌だって言ってもやめないぞ。
それでもいいか?」



見上げたこのはの顔が一気に真っ赤になる。


「理性ってそういう意味⁉」

「当たり前だろうが!どれだけ俺が耐えてると思ってるんだ!」



こうして抱きしめただけでヤバいっていうのに。


感情をコントロールするのだって必死だってのに。


落ち着いた大人の男みたいにこのはが思ってるから、優しい男を演じているだけなのに。


「悪いけど俺も男だからさ。めちゃくちゃにしたくなる衝動だってあるんだよ。」


このはは真剣な顔をして俺をみあげている。


「どんだけ忙しくても、自分がきつくなっても、お前と一緒にいる時間を無理矢理にでも作って、お前を思う存分味わってやりたくなるんだよ。


そんなヤツなんだよ、俺は。


ただの助平オヤジだよ、幻滅したか。」


最後の一言を言い切ると、このはが笑う。

「オヤジじゃないよ、彬ちゃんは。」

「じゃあ何なんだよ。」

身を捩り、少しだけ2人の間に距離を置いてこのはが言う。


「でも嬉しい。欲しいと思ってくれてるんだよね?こんなアタシのこと。」


「惚れた女を欲しいと思うのは当たり前だ。」



極上の笑みを浮かべたこのはが俺の首すじに腕を巻きつけ、精一杯背伸びしてキスをしてきた。

「‼」


「大好き…。」

それだけで充分だった。
理性のスイッチをオフにする。

思うがままに、愛を確かめ合おう。


これから先、何があっても大丈夫なように、お互いの全てを曝け出して…。






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