スキというキモチのカタチ。
「お疲れ〜!」




グラスをカチリと合わせる。


このはは美来と2人、昼間はカフェ、夜はバーをやっている店『cat walk』へとやってきた。



「マスター!お任せで何かおつまみの盛り合わせ作ってー‼」


カウンターに向かって、美来が見た目とは裏腹なおおざっぱな注文をする。



「相変わらず注文が適当すぎ(笑)」



このはが突っ込むと綺麗な顔をくしゃりと崩して美来は笑う。



(やっぱり美来って綺麗。

オンナのアタシから見てこれだけ綺麗なんだから、男性からしたら…。羨ましいな…。)




「で?

このはが悩んでる色気とか女子力とかってさ、例のお隣さんのせい?」





テーブルに肘を付き意地悪とも取れる表情で美来はこのはに問う。


「んー。何が足りないのかなって思って。」





綺麗な色のカクテルをひと口飲むと、ため息と共にキモチを吐き出す。




「お見合いしたんだって。」






そう告げると美来は大きな目を更に大きくして「はぁ⁈」と言う。


「何よそれ、このはのキモチを知ってて言うの⁈」


「実際教えてくれたのはおばさん。

わざわざ教えてくれたの。今朝彬ちゃんに聞いたらホントだって…。」


ショックだった。

けど…普通の顔していられたよね、多分。



「このはさぁ、なんでその人じゃないとダメなの?そもそもさ、アンタは可愛いんだからその人に執着しなきゃ彼氏だって普通にいるはずだよ?

何かあるの?」





美来が真剣に聞いてくる。



「お待ちー。ってタイミング悪かった?」




マスターの茅部さんが人好きのする笑顔で聞いてくる。
手には色んな物がのせられたおつまみの山。



「いや、大丈夫です。」




あくまでも冷静に答える。




「このはちゃん、彼氏いないんだ?

おっさんでもよかったら、俺立候補しようかなー。」





お皿を並べながら茅部さんがこちらを見て微笑む。



彬ちゃんと変わらないくらいの年齢かな。



笑うとシワが寄るんだけど人懐っこい笑顔だよね。



「とんでもない!

茅部さんが彼氏になったら他の人に取られちゃわないか心配になって仕事も出来ませんよ〜!」



当たり障りのない返事、出来たかな?



「またまたぁ、勿体ぶって!

俺じゃダメってことかなー。」


「茅部さんくらいの年齢がこのはのストライクゾーンなんですよ〜!」




いきなり美来がニヤリと笑いながら話し始めた。

「ちょっ…⁈美来!」

「目先を変えなさいよ、このは。

振り向かない人を思うより自分を想ってくれる人を愛する努力しなさいよ。」






ビックリするくらい真面目な顔をした美来が言う。




アタシも固まっちゃったけど、それ以上に茅部さんがフリーズしている。

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