サンドリヨンは微笑まない

遼、と呼び止める。


「ん?」


振り返る遼に千円を押し付ける。

優しかった顔が、は? と怪訝そうな表情へ変わった。


「遼に奢ってもらう理由、ないよ」


強く言うと、遼は黙ってそれを受け取った。

あたし、遼のなんでもないから。

少し歩いてコンビニの横を通った。遼と初めて会った、公園近くの場所。

なんとなく意味もなくそこを歩いていると、張り紙を見つける。


「遼、花火大会だって」

「あー、そういえば毎年あるな」

「そうなの? 去年もあった?」

「去年は雨で中止だった」


思えば去年の夏は雨が多かった気もする。

正直あんまり覚えてないけれど。



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