サンドリヨンは微笑まない
電話を切ったのと同時に遼が麦茶を持ってやって来た。
ひとつのコップを受け取って飲み干す。
「なんかね、岸田さんからだったんだけど、平井さんが焼き肉奢ってくれるから来てって。無理なら断って…」
「タダメシ万歳」
遼も人の子だ。
あたしはタライの水を捨てて、ベランダに放置しておいた。次来た時に使おう。
遼は遼で、絵をどうするか迷って、結局片付けることにしたらしい。
筆とか雑巾とか、洗うものがお風呂場へ運ばれていく。
「なんか手伝う?」
「じゃあそこの端持って」
折り畳んでしまうらしい。
あたしは端をもって遼の言うとおりに動く。