サンドリヨンは微笑まない
「遼って、油絵も描くの?」
「油絵? なんで」
「初めて来た時、油絵の匂いしたから。描くのかなって」
「なんで絵の匂い知ってんの?」
なんでって。
畳まれた絵は乾いていたみたいで、リビングの端へ置かれた。
「お母さんが美術の先生だった…から?」
「は…!?」
「え? 言わなかったっけ?」
「言ってねーよ。あんたの姉貴が大黒柱だってことしか聞いてない」
そんなこと言ったらあたしだって遼にお兄さんがいることしか知らないけどね。
幼い頃の記憶はあやふやで。