サンドリヨンは微笑まない

やっぱりそうなんだ。

岸田さんは知っているのかそれとも聞かないふりなのか、素知らぬ顔でレモンアイスを口に運ぶ。


「最初にスカウトした時から、もう子供いたんだと」


…はい?

この大女優に子供? え、父親は?

そこで蘇る『あたしなんて中卒だからね』という言葉。


「面倒見ながらモデルやってたってことですか?」

「ううん、子供はすぐに親戚の家に預けたらしいよ」

「父親は…?」


戸惑いを含む遼の声。あたしのりんごアイスは、半分溶けていた。


「死んだよ。事故だか、なんだか。族に入ってたらしくてさあ。毎年その命日に追悼があんの」



< 193 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop