サンドリヨンは微笑まない
やっぱりそうなんだ。
岸田さんは知っているのかそれとも聞かないふりなのか、素知らぬ顔でレモンアイスを口に運ぶ。
「最初にスカウトした時から、もう子供いたんだと」
…はい?
この大女優に子供? え、父親は?
そこで蘇る『あたしなんて中卒だからね』という言葉。
「面倒見ながらモデルやってたってことですか?」
「ううん、子供はすぐに親戚の家に預けたらしいよ」
「父親は…?」
戸惑いを含む遼の声。あたしのりんごアイスは、半分溶けていた。
「死んだよ。事故だか、なんだか。族に入ってたらしくてさあ。毎年その命日に追悼があんの」