サンドリヨンは微笑まない
ガムシロップを入れた平井さんが話を続ける。
「で、社長直々にキミをスカウトしてるんだけど、返事は?」
「いや…まだちょっと」
だって、なんて言ったら子供の言い訳のように聞こえてしまうけれど。
今日あたしは事務所をクビになったんだ。
それなのに今日急に新しく他の事務所にスカウトされるなんて。
自分に魅力があるんだ! なんて思ってしまえば楽なのに、そんな度量は無い。
ラッキーというか、逆に運が良すぎて怖いくらい。
「そういえば、名前聞いてなかったね。はい、横の彼からどうぞ」
ぐるりと中の氷も一緒にかき混ぜる音が涼しげ。