サンドリヨンは微笑まない

ガムシロップを入れた平井さんが話を続ける。


「で、社長直々にキミをスカウトしてるんだけど、返事は?」

「いや…まだちょっと」


だって、なんて言ったら子供の言い訳のように聞こえてしまうけれど。

今日あたしは事務所をクビになったんだ。
それなのに今日急に新しく他の事務所にスカウトされるなんて。

自分に魅力があるんだ! なんて思ってしまえば楽なのに、そんな度量は無い。

ラッキーというか、逆に運が良すぎて怖いくらい。


「そういえば、名前聞いてなかったね。はい、横の彼からどうぞ」


ぐるりと中の氷も一緒にかき混ぜる音が涼しげ。



< 21 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop