サンドリヨンは微笑まない

資料を平らに戻して、平井さんはそれで自分の肩を叩いた。

手に負えない子供を見ているような表情。


「なに? また飯田になんか言われた?」

「言われてません」

「何拗ねてんの」


正面から頬を刺された。爪が食い込んできて痛い。

決して拗ねているわけじゃない。

頭の中がごちゃごちゃして、上手く整理出来ていないだけ。


「平井さん、仕事より大切なことってありますか?」

「それはあるね」

「なんですかそれって」

「子供には教えません」


指が離れていく。すごい気になる。平井さんの仕事よりも大切なこと。

その後いくら問いつめてみても教えてくれなかったけれど。



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