サンドリヨンは微笑まない

長年愛用したお皿よさよなら…。

悲しい別れをしてから、キッチンから出るとチャイムが鳴った。扉を開けると岸田さんがいて、午前中に見た顔と同じ顔をしていた。


「ホタル、起きて大丈夫なの?」

「あ、はい。治ったのかな?」

「本当に心臓に悪い…兎に角これちゃんと飲んで。あ、遼くんありがとうね」


いーえ、とあたしの後ろにいた遼が返す。


「…なにかあったの?」


鋭い岸田さんの質問に、バカなあたし目を泳がせた。

代わりに遼が答える。


「螢が転んでお気に入りらしい皿を割りました」

「え? 怪我は?」

「皿が重症です」


< 270 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop