サンドリヨンは微笑まない
遼の家はこの前の夜に会った公園の近くのマンションだった。
あたしは二階建てのハイツなので、部屋に行くまでエレベーターを使うのがとてつもなく豪華に思える。
いやいや、そんなことよりこれでも生活能力はある方だと思っていたんだけど。
今のところ収入ゼロ。前までお母さんから来ていた少しの仕送り分を崩しながら食べている。
遼が扉を開ける。
途端に香った匂いに足を止めた。
「窓開けてくるから、嫌だったら少しそこで待って」
そう言い残して扉を開けっ放しにしたまま玄関へと消えていく。
これ、油絵の匂いだ。