サンドリヨンは微笑まない
岸田さんは小さく首を振って、荷物を持った。
「まだ目立つね」
「こればっかりは自然治癒しか…」
「一週間もあればちゃんと治るよ」
あたしの右目の周りには薄ら青い痣が出来ていた。
一昨日、体育の授業でバスケットボールを受け取り損ねた。
その瞬間を見ていた伊月さんが言うには、受け取り損ねではなくて、クリーンヒットらしい。
クリーンヒット…。
「一昨日見た時はびっくりしたけど」
「パスしてくれた女子のびっくり様には負けますよー」
「気は失わなかったの?」
「全然、鼻血で保健室に行ったくらいです」