サンドリヨンは微笑まない
振り返りもしない平井さんに、眉を顰めてあたしの顔を窺う。
「大丈夫? ごめんね」
「あ、とんでもないです…当然のことなので」
「ううん、でこピンのこと。赤くなってないね、良かった」
あ、デコピンですか。
額を見た秘書の人は平井さんの背中を追いかけていった。
小倉さんはここの専属カメラマンだから、平井さんに話がまわるなんて当然のこと。
メイクさんにコンシーラーを塗りたくって貰ったのだけど、元々肌があんまり黒っぽくないから、変に浮き出た。
メイクさんもお手上げ状態で、小倉さんの前に出て、あの言葉を突きつけられた。