サンドリヨンは微笑まない




鼻唄を歌いながら、廊下を歩く。


「上機嫌だね」

「あ、伊月さん!」


後ろから声をかけられて、振り向く。大きい声を出したからか、少し眉を顰めた伊月さん。

あたしは躊躇わずに紙袋を差し出した。


「クリスマスプレゼント」

「…え?」

「そんな引き気味に言わなくても。嘘です、この前の傘のお礼です」


そういうことね。と受け取ってくれた。


「この前マネージャーに教えてもらったんだ、美味しいケーキ屋さん。そこのクッキー」

「あ、知ってる。うれしい、ありがとう」


伊月さんのはにかむ顔が可愛くて、写真におさめたかった。


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