サンドリヨンは微笑まない
ひとまず事務所へ行って頭を冷やそう。
もしかして幻覚かもしれない。怖いなあ、最近寒いし。
熱かな? 腹痛の次は熱があるのかもしれない。
額をペタペタ触りながら歩き出す。
「大遅刻生意気モデルの螢さーん」
背中にかかる声に振り返る。
…おいおい幻覚じゃないぞ。
そして御近所迷惑なのでやめてもらえませんか…。
「また逃げんのかよ」
遼はしれっとした顔で、チャコールグレイのマフラーを首に巻いて、約一ヶ月ぶりに。
あたしの前に現れた。