サンドリヨンは微笑まない
それに、ますます遼の描く絵が見たくなる。
「そんな簡単な話じゃないけど」
肩を竦めながら遼はリビングに戻って、低いテーブルの前のソファーに座った。
その近くの床に座って教科書を開く。
「どこまで分かんの?」
「んー…と、どこだろう」
「じゃあまずこの問題解いてみて」
そうそして。
冒頭の会話に戻る。
合っている答えはひとつも無いらしく、遼の持っている赤ペンは動かない。
「…もう救いようない?」
「いや、今から叩きこめば間に合う」
窓から風が入ってくる。もうすぐ夏だ。
あんなに長かった梅雨が終わってしまう。