サンドリヨンは微笑まない

濯がれた食器をあたしが拭く。うちには水切りみたいなものや食器乾燥機みたいなものがない。

少しの沈黙があって、


「遼とのぞみさんて、」

「聞こえてる。つか、もうその話あんまり蒸し返さないで。傷が痛い」

「失恋の痛み、まだ残ってたの?」


この前きっぱり別れたといっていたのは幻聴ですか。

全部拭き終わって、遼が手を洗う。

長い指が綺麗。爪の根元には取れないのか少し絵の具が残っている。


「は?」

「え?」

「のぞみを理由にあんたを蔑ろにしたこと」


ないがしろ。

頭の中で漢字に変換されない。


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