サンドリヨンは微笑まない
遼のパーカーのジッパーの所に絡まるあたしの髪の毛。
冬は暖かいからと…いや年中放っておいていたのが悪い。
あたしがカチャカチャしていると、後頭部を掴まれた。
前の事故、が目の裏に蘇って浮かぶ。
「…なに」
「必殺技」
「は?」
髪の毛を投げ出して遼の胴体に抱き付く。
これでキス出来ないでしょう…!
あたし頭が冴えてるんじゃないか? と思いながらそのままの体勢。
…いつまでこうしていれば良いのかな。
動かないあたしの頭を撫で始める遼。ペットみたい。
近くに置いてあったヘア用の鋏を掴むと、その手を止められた。