サンドリヨンは微笑まない
思ったって、何を思ったんだろう。
「あたしだってお味噌汁くらい作れるし! 出汁と、味噌と具入れるだけなんだから」
「うん、そうですよね」
「…お正月っぽくない」
唇を尖らせながらお味噌汁をお椀の中に入れる。勝手に遼にも食べさせようと思って、ふたつ。
遼は何も言わずに手を洗って家から持ち出した蟹をタッパーから出した。
大きいハサミ。細長いアシ。
「本当に持ってきて良かったの?」
「毎年残るから良い」
それから、元旦の蟹とお味噌汁とご飯、という朝食を食べた。