サンドリヨンは微笑まない
前髪を梳いてくれた藤堂さんは、誰が見たって惚れてしまうくらい美しかった。
ブラックローズのドレスがとても似合っている。
あたしもこんな風になりたい。
「藤堂さん、ホタルさん、こっち来てください!」
スタッフの人が呼ぶ。あたしと藤堂さんはそっちを見て、岸田さんに「行ってきます」と言った。
「あ、これよろしくお願いします」
「なんで持ってきたの」
「ちょっと芦花ちゃんとメールしてて」
携帯を岸田さんに渡して、今度こそスタッフの人についていく。
ショーの舞台裏は、今は静か。
でも、始まったらこんなの嘘ってなるらしい。