サンドリヨンは微笑まない

うちに探偵を買収するようなお金はない。

じゃあ誰が、何の目的で?


「それ、私です」


メロンを切っていたナイフが止まる。

あたしも平井さんも遼も驚いてそっちを見た。


「どうして…」

「彼女を絶対に失いたくなかったから」


口元の笑みがヤケに鮮やかに見えて、初めて会った時のことを思い出す。


「どんなに笑えなくても、魅力がある。だから、言いたくない過去は消そうと思って」


それは、触れたことのない善意。

あたしは、どうすれば良いのか分からなかった。



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