サンドリヨンは微笑まない

その四人一行が帰る、となった時に遼だけが残った。

正面玄関まで見送りに行ったあたしの服の袖を少し掴んで、自販機の前まで行く。

あたしの胸はドキドキと嫌な鳴り方をしていた。


「螢」

「あ、はい」

「触ると痛い?」

「だいじょうぶ」


答えると、遼がふわりと抱き締めてくれた。

あ、涙腺が崩壊しそう。

あまり力は入れずに、それでも温かい。

そういえばマスクも帽子もしてない、と思ったけれど、遼と観葉植物が隠してくれていた。

ゆっくり遼の頬に手を伸ばす。



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