サンドリヨンは微笑まない
遼が起きた。
薄暗い中に、その顔が見える。
「あたしが、お姉ちゃんに追い出された理由を話すと色々分かるよ」
「オススメみたいに言うなよ」
「オススメメニューでーす」
「螢」
窘められる。あたしも起きあがって、遼の胴体に抱き付いた。
「好きだよ、遼」
それを他に表す言葉があるなら、なんだって覚えたい。
あたしの頭が追いつく範囲で、だけれど。
何も返事はしなかったけれど、遼は優しく頭を撫でてくれた。知ってるよ、遼がいつも優しいなんて。
決して昔という言葉じゃ大袈裟すぎる、過去の話をしよう。