サンドリヨンは微笑まない
もう一度、抱きつく。ぎゅうぎゅうと締めつけると「肋折れたら料理出来ないからな」と脅される。ひどい。
「あ、でもね。お姉ちゃんはお母さんの前の旦那の子供で、あたしは蒸発しちゃった旦那の子供なんだよ」
「それはアッサリだな」
「家族だからね。長年の喧嘩も一晩で仲直りですよ」
「それは良かった」
「他に聞きたいことはありますかお客さん」
「あんたの、これからのこと」
これから。
窓から夕闇も入らなくなった。
闇に慣れたあたしの目は遼の顔を認識出来るけれど、遼はどうだろう。
ちゃんと、あたしのこと見えてる?
「あたし、事務所辞めようと思うんだ」
誰にも、お母さんにも言ってないこと。