サンドリヨンは微笑まない

モグラが地上に出てきた時もこんな気持ちなのかも…と目を細めていると、手を引いていた遼が立ち止まった。

まだ何かあったのか、とその背中を見るけれど、振り返らない。

声をかけようとしたとき、


「あんたが病院に運ばれたって、岸田さんに聞いた時」

「うん?」

「大学で勉強してたんだけど」


うん。と見てないけど頷く。

無理矢理遼の前にまわることも出来たんだけど、やめといた。


「一瞬驚いて、反射だと思うんだけど泣いたんだよ」

「…遼が?」

「うん。自分でも驚いた」


見えてないのは、あたしの方じゃないか。



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