サンドリヨンは微笑まない
頬から手を離して、唇を重ねる。
螢には何度も狡いと言われたけど、こっちの方が何度狡いと思ったことか。
目を閉じる仕草も、笑う表情も、その長い睫毛も、全部美しくなっていく。
しかもこのシンデレラ、かなりの逃げ腰だからな。
その割に、元不良なだけあって最初に不意打ちでキスをした後、あまり動じてなかった。
「わ、久しぶり遼くん」
丁度エレベーターの前に居た岸田さんと鉢合わせする。
「社長、逃げずに閉じ込めといたから大丈夫よ」
「岸田さんありがとう!」
螢がガッツポーズをとる。岸田さんはいくつになってもパワフルだ。
「お幸せに」
背中にかかった言葉に振り返る。