サンドリヨンは微笑まない
ホタルは灯らない
あたし、この街出てくから。
彼女は吐き捨てるようにそう言った。元凶とも言える男は傍にいるが、別に責めることはしなかった。
「結局、渦見もあたしも自分が可愛くては絡んでた。くっだらないな、反吐が出る」
「螢は可愛いと思うけど」
男は本音を言って、ベランダの窓を開ける。
月が雲に隠れている。輪郭のぼやけたそれは、彼女の白い腕を栄えさせるには充分で。
「その程度、なんだよ全部」
男にその言葉が届いたかどうかは分からないが、煙草を吸い始めたのを見て、彼女もベランダに出た。