サンドリヨンは微笑まない
一本頂戴、と言わなくても差し出された一本。
遠慮なく貰って、使い捨てライターを出して着火レバーを指にかける。
上手くつかないそれを見て、男が「はい」とジッポーを投げた。
上手くキャッチをして、火をつけた彼女は煙を吐いてそれを返そうとした。
「それ、餞別」
「せんべつ?」
「お別れの品だよ。あげる」
「これ高いのじゃん?」
くるりくるりとライターが、彼女の手の中で回される。
「ホタルには光が似合ってる」
「そうかなあ」
「そういえば、姉さんが住んでる街は夜も明るいって聞く」
男はベランダの外を見ながら言った。
煙草の灰を落として、煙を吐く。