サンドリヨンは微笑まない
平井さんを見送りに玄関まで行く。
急に振り返って頬に指が刺さる。痛い痛い。
そういえば、今日は女の格好をしている。
「ハルカくんに食べさせて貰ってるからって、食べ過ぎ注意」
「う、」
「見れば分かる。まあ前のヒョロヒョロよりは良いけど。確かにキミ、あの事務所に居ても出世しないな」
「…え」
「バストが足りない」
唖然。
頬を刺していた指があたしの鎖骨をつんとつつく。
力もそんな強くないのにふらりと後ろによろけた。
「じゃあね、ハルカくん、約束の物は今度渡すよ」
後ろに居たらしい遼に向かって言う。
あたしも振り返って見ると、頷きながら「お願いします」と返した。