サンドリヨンは微笑まない

玄関の扉が閉まる音が聞こえてから、軽くそっちを睨んでおいた。

平井さんがエレベーター乗るまでに二回転びますように。


「何で膨れっ面?」

「何でもない。あたし勉強したら帰る」

「は? 今日はミネストローネだけど。しかもあんたの分も買ってきたんだけど」

「だめ、今日は帰って豆乳飲んでキャベツ食べなきゃ」


あ! と、鞄から財布を出す。

あ? と、遼が怪訝な顔をする。

千円? 二千円、で足りるかな。てゆーか持ち金がこれしかない。


「今月の夕食費」


顔色が変わった。



< 55 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop