サンドリヨンは微笑まない
最初から断わるべきだったのだけど、ここまであたしは遼の善意に甘えてきた。
でも、来週は課題とかがあるらしいし、本格的に良くない。
あんたさ、と遼があたしの腕を掴んで玄関に入れた。
「カメラの前じゃあんなに堂々としてんだから、日常でも図々しく生きてけば良いのに」
「…そんなの」
「俺は前事務所の社長だかあんたの姉貴だか高校の教師みたいに、あんたを中途半端に投げ出したりしない」
玄関の扉が閉まる音。
それより少しだけ前に、遼の服の裾を掴んで胴体に抱きつく自分が居た。