サンドリヨンは微笑まない
何度も見るけれど三棟は出現しない。
幻の棟とかじゃないよね…?
「見学?」
後ろから声を掛けられて肩越しにそっちを見る。声の通り、男の人。
これは少し嫌なパターン。
「あ…と、そんな感じです」
「どこ行くの? 案内するよ」
ひょい、と紙を取られた。ちょっと、と手を伸ばす。なんか、デジャヴ。
あたしから声掛けたんじゃないもん。向こうから勝手にきたんだもん。
なんか遼にすごく怒られそうな気がして言い訳を並べる、暇な頭。
「三棟ってここじゃないんだよ、向こうにも建ってるあれ」