サンドリヨンは微笑まない

話の意図が分からなくて、笑っておく。

紙をペラペラしながら、その人は言った。


「俺も美術専攻なんだけどさ。これ、樋口のだよな。もしかして樋口の彼女?」


樋口。苗字だよね、遼の苗字…樋口だ。


「いえ、妹です。忘れ物と差し入れを」


キッパリと言った。

その人はちょっと驚いたように「へえ」とだけ言って、前を向いた。

作業場の扉の階は全部美術専攻の人が占めているのか画材の匂いがする。中学の美術室を思い出す。

ガラリと引き戸を開けて、その人は「樋口ー、いもうと」とだけ言って入っていく。


「あ? 邪魔しに来たんなら帰れ帰れ」


遼の声。



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