サンドリヨンは微笑まない
足を踏み入れる。ちょっと不機嫌な遼の声がまた何かを言った。それに、案内の人も返す。
「折角癒やしの妹連れてきてやったのに」
「居るのは兄貴だけだって知ってんだろーが」
「あ、そっか。らしいよ、妹ちゃん?」
だから、と遼が振り返る。
この人知ってたのか。遼に妹なんて居ないって。
確かに筆跡だけで遼だと分かる人がそんなに浅い関係なわけがない。変なこと言わないで普通に勉強教わってますって言えば良かった。
だって、遼さんすごく呆れた目でこっちを見ていらっしゃる…。
「じゃ、課題頑張れよ」とあたしを残していく案内の人は、ひらひらと手を振りながら出て行った。