サンドリヨンは微笑まない
食べ終わったサラダのパックと割り箸をビニール袋に入れる。遼の視線が向こうに向く。
「なに?」
その声が思いの外優しくて、どきりとする。
「アクリル絵の具の予備、どこにあるかわかる?」
「そこの一番上の棚。取るよ」
「ありがと、ごめんね」
袋を結んで、彼女の方を向く。視界に映る横顔に、声を失う。
彼女もこっちを見て、微笑んだ。
「こんにちは、ごめんねお邪魔しちゃって」
お邪魔という割りには、ズカズカ入ってきましたね、なんて言えない。
あたしはただ首を振って黙る。
二人で遼の絵の具を取る後ろ姿を見ていた。