サンドリヨンは微笑まない

涙で潤む視界を遼が振り返る前に拭った。

やっぱり、よくなかった。

浮かれて大学まで来ちゃって、結局こんなで。電車賃が云々どころじゃない。こんなの、マイナスだ。

落ち着かない気持ちのまま明日の勉強を教わって、早めに終わる。


「今日送ってけないから、早めに気をつけて帰れ」

「うん、ありがとう」


遼の手の平や側面が真っ黒になっていた。


「あのさ、」

「ん?」


のぞみさんのこと、まだ好き?

いつもなら、聞けたと思う。最初みたいに、知らずに傷を抉ってしまうことも出来た。

でも、今回の傷は、遼のじゃない。


「…試験期間中は友達と勉強するから、大丈夫。もう来ないから、課題頑張ってね」



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