サンドリヨンは微笑まない

状況が上手く飲み込めなくて、デビューの喜びが半減した。


「それは本人に聞いて。あと、今後の打ち合わせもしておいて」

「はい」

「これから忙しくなるから」


どことなく、平井さんが楽しそうだったからあたしも少し楽しみ。

事務所を見回したけれど、藤堂さんの姿は見えなかった。

岸田さんと一緒に会社の会議室みたいな所に入った。沢山ある椅子の中で、貧乏性が働いたあたし達は端っこへ座る。


「岸田さん、事務所は?」

「んーとね、潰れちゃった」


思わず口が半開きになる。

潰れたって? あそこが?



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