サンドリヨンは微笑まない
専属じゃないけれど、スタイリストさんやメイクさんがついてくれて、髪の毛を巻いている最中のこと。
「…ホタル」
「はい」
暗い声で岸田さんが近くに来た。
どうしたのだろう。聞く前に、メイクさんの手が止まった。
「向こうのモデルが、ホタルとはもう撮りたくないってごねてるの。今回のメインはあっちだし、今日は…」
「なんですかそれ」
カチンときた。
岸田さんにではなくて、飯田千穂とかいうあの女に。
こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって! とかいうどこかで聞いた台詞を借りる。
一言なんか言ってやりたい。